かがやき+1 平成22年度5月
2010年5月31日

この「かがやき+1」では、子どもたちの姿を通して、保育者が、保育の中で感じたこと、考えていること、大切にしていることをお伝えしていきます。 今回は   

『つくりたい!ぬりたい!またやりたい!!』

です。

 やっと暖かさを感じられるようになってきたこの頃、子どもたちはそれぞれに、ドキドキ・わくわくしながら始まった長谷幼稚園での新しい生活にも少しずつ慣れてきました。最近では、安心できる場となってきていた自分のクラスだけでなく、他のクラスに行ってみたり、園庭に出て探検したり、砂山で掘って・集めて・流して…砂や水の気持ちよさを感じたりしている姿もたくさん見られるようになりました。そして、ひとりひとりのペースでだんだんと周りのことが分かり、友だちという存在にも目が向き、遊びが拡がってきていることを感じます。  ある日、部屋で遊んでいた数人の子たちが、「たんけんにいこうよ!」という話で盛り上がっていました。「たんけんには、これもっていかなくちゃ!」と言って、箱や紙・トイレットペーパーの芯でつくった、双眼鏡や地図・魔法の杖を持って、いざ園庭へ!その道すがら、何人もの子にヒソヒソ声で「ぼくたちたんけんたいだから!」とこっそり声を掛けていきました。  すると自然と、年齢・クラスを越えていろいろな子たちが「わたしも」「ぼくも」と加わっていき、いつのまにか探検隊は大所帯!そんな中ひとりの子が、「たんけんたいがいっぱいになってきたから、みんながはいるくらいの“ひみつきち”つくろうよ!」とひらめきました。  そしてみんなで「ここにしよう!」と決めたのが、いつも『たいこ橋』と子どもたちに呼ばれている遊具の所。「ここにやねつけてさ、きをはやそうよ!」「じゃあ、やねにはこいのぼりがあがってるってことね!」と、子どもたち。四月の終わりにみんなで作って五月に空高く上げていたこいのぼりのこと、印象的だったのですね。(白い布にえのぐで色をぬり、こいのぼりをつくった様子は『はせっこアルバム』をご覧ください。)みんなでどんどん段ボールや紙をたいこ橋にくくりつけ、あっという間に“ひみつきち”は出来上がっていきました。  そこで一人の子が、「せっかくこいのぼりもできたんだし、このまえこいのぼりつくったみたいにいろぬろうよ!」と言ったことによって、作ったところにえのぐでぬっていくことにもなっていきました。ここでは、つくるときにはいなかった子も、「なんだかたのしそう♪」と興味を持って、遊びに入ってくる姿もありました。  こんな風にして子どもたちは、「あのときやったあれ、またやりたい!」という気持ちや、他の子がやっているのをみて「ちょっとやってみようかな?」という気持ちを、遊ぶ中・生活の中で育てているのを感じます。    また、この時期、子どもたちが「おもしろそう!」と感じるような空間を、木箱や木を使って保育者が園庭に作り、そこに紙や段ボールを貼って子どもたちがそこにえのぐでぬたくれるようにして、体いっぱいにその気持ちよさ・楽しさを味わえるようなきっかけを出していきました。  朝、幼稚園に来てみたら、見慣れた園庭が大変身!!「なにこれーー!」「よるのうちに、えんちょがまほうをつかったの?!」と口々に驚く子どもたちの表情は、早くもわくわくでいっぱい!バケツに入ったえのぐと筆を持って、みんなでその空間にはいってみると…「めいろみたーい!」「ここはうえにもかけちゃうよ!」「ここはつるつるしててかけなーい!ふしぎ!」「ねぇねぇあっちもぬりにいこ!」いろいろな声があちこちから聞こえてきました。 ひとくちに“えのぐ”といっても、そのおもしろさは本当に様々です。ぐーっと腕を動かして壁一面をぬたくる気持ちよさ・薄めに作ってあるえのぐが、しばらくするとスーッと消えてしまうことの不思議なおもしろさ・網戸にぬったときにしゅわしゅわとえのぐがはじけていく様子・いつのまにか色が混ざり合って思わぬ色になったときのわくわくする気持ち…約一週間くらいの期間をかけて遊んだ、この空間でのえのぐの中で、子どもたちはひとりひとり、いろいろな「たのしい!」を見つけているようでした。  “ひみつきち”の話にあったように、自分たちで作った空間があったことで、グッとえのぐに気持ちが向いたこもいれば、園庭に拡がっていた空間がきっかけで、えのぐが楽しいもののひとつになった子もいます。そのどちらの姿も、大切にしたいな、と、私たちは考えています。 これから、気温が上がり外で遊ぶことが気持ち良くなっていく中、えのぐだけでなく、砂・水・泥・ベトベトのり(小麦粉に熱を加えてのり状にしたもの)などの素材も出していきます。たくさんの子がそれらに触れ、それぞれの独特の気持ちよさ・おもしろさを感じて欲しいなと思っています。最初は新しい感触にドキドキする子もいるかもしれませんが、友だちがやっているのを見て「ちょっとやってみようかな」と思えたり、私たち保育者も、子どもたちがまず「やってみたいな」と思えるきっかけを一緒につかんだりしながら、ひとりひとりの好きなこと・楽しいことがより拡がって、じっくりとすごしていけるといいな、と思っています。 H22.05-PLUS1.jpg