『畑のかかさん』
夏、長谷幼稚園の畑では、色とりどりの野菜が実っています。子どもたちが苗から大事に育てた野菜は、毎日たっぷりの水とお日様のパワーをもらって、大きくおいしく育ちました。おや?その畑に誰かいるみたいです。名前はかかさん。この畑を守っているかかしです。かかさんがこの畑にやってきたのには、こんな理由がありました。
日差しが強くなってきた頃、畑のきゅうりが大きな実をつけました。「あしたたべられるかな?」と胸をわくわくさせて心待ちにしていた子どもたち。ところが次の日・・・。きゅうりがなくなっている!辺りを探してみると、園庭に何かの生き物によって食べられたきゅうりが転がっていました。「たべられちゃったー!」と残念そうにきゅうりをかき集める子どもたち。そんな出来事から、きゅうりを食べられないようにするにはどうしたらいいのだろう?と考え始めました。
ある子は長い布の紐を使って網をつくろう!と思いつきました。畑にカラスが入れないように、と考えたのです。そこには野菜が見えるのぞき穴もついています。それができてから、子どもたちは野菜の成長を見るのがもっとうれしくなりました。
「かかしをつくったらいいんじゃない?」 網をつくる姿を見ていた別の子が言いました。「かかしだから、なまえはかかさんだよ!」
箱やダンボール、布などを使ってつくりながら話しも弾み、子どもならではおもしろい想像が膨らんでいきました。ちょっと話しを聴いてみましょう。
「きっときゅうりをたべたのはカラスだよ!あそこにいたもん!」
「かかさんがおもしろいかおをしてたら、わらっちゃってかーかーってにげちゃうかも!」
「でもきっとカラスもおなかがすいてたんだよね。きゅうりいっこならいいか!」
「だけど、みんなのたべるきゅうりもほしいよね・・・。」
「じゃあかかさんのおなかにカラスのおべんとうをつくっていれてあげようよ!」
こうしてかかさんは生まれました。こんな風に日常のなかにある何気ないことをきっかけに、色々な楽しさや空想の世界が子どもたちのなかに広がっていく姿って素敵だなと感じます。カラスの気持ちを考えてみたり、仲間と気持ちをあわせてつくるのが楽しくなったり、きゅうりの歌を思いついたり、かかさんを招待して一緒にお弁当ときゅうりを食べたり・・。きゅうりを食べられてがっかりしたことよりも、たくさんの楽しいことがありました。
かかさんは、今日も畑で子どもたちとカラスが幼稚園に来るのを、お腹にお弁当を大切にしまいながら待っています。