はせだより+1 平成17年 10月
2005年11月6日

このコーナーでは、私たち保育者が、保育の中で大切にしていること、考えていること、感じたことを、子どもの姿を通してお伝えしていきます。 今回は   

子どもが考える行事

です。

 10月に、子どもが考える行事(子どもが園庭に木箱や板を使って空間をつくり、その空間の中で体を動かして遊ぶ)というのがありました。長谷幼稚園では、日ごろから子どもが考えつくるということを大切にしてすごしています。そこで、「行事」というものを、おうちの方に見ていただくためにつくるものではなく、つくったり考えたり遊んだりと過ごしていく生活の流れの中の一日として、おうちの方も一緒に参加してもらうという日としています。その為、行事が終わってしまったらそこで終わりではなく、その後も、作った空間で遊んだり、「ここ打ちたい!」という子どもの気持ちは続いているのです。  今回は、「うちゅう・ろけっと」の世界がひろがりました。トンカチ・ノコギリで「うちゅう・ろけっと」を作り上げる、ということを求めるのではなく、ただトンカチで色々なところに打つことを楽しんだり、同じ場所をつくり続けることで満足したり、自分のペースで楽しさ、うれしさ、満足するということを感じたりしている子どもの姿を大切に過ごしました。  ろけっとの入り口には、「ぐるぐる回転ドア」というものができました。これは、子どもたちが「こんなのつくりたい!」と考え、そこから「あ〜してみよう!」「こうしてみよう!」「あ〜でもない」「こ〜でもない」と試行錯誤を繰り返しながら本当にぐるぐるまわるドアが完成しました。大人たちも「これつくったの?」とビックリする人がたくさん!いろいろなアイデアがでてくることでイメージも膨らみ、そのイメージしたものをどのようにして形にするのか考え、つくっていきました。思うようにいかないときには、またそこで1人だけではうまくいかないことも周りにいる子とどうしたらよいかアイデアを出し合ったりすることでうまくいったり、新たな発想がでたりという子どもたち同士の関係や関わりも大切にしました。また、子どもたちの考えたりつくろうという気持ち、工夫していく力に出会いたくさん驚かされました。子どもたちも「すごいね〜!」「どうやってつくったの?」などと作ったところを見て感じたり、またその声を聞いた子どもたちもうれしく感じたりと、そんな子どもたち同士の気持ちも大切にしたいと思っていました。 そんな宇宙の空間には、星が見えるトンネルができ、これはトンネルは暗くてキラキラの星が見えるということで、木箱でトンネルを作った後に、布をかぶせてキラキラのリボンの星を貼り付けたり、と、どうしたらきれいなトンネルができるのか考えつくる姿が見られました。他にも、グルグルのぼれる「グルグル階段」、ろけっとが発射するのに必要な「まわるぷろぺら」、呪文を唱えると開く「ドア」、上にも登れちゃうすべり台とはしごのついている「うちゅうようちえん」、丈夫にできている「とおれるみち」ができました。  このような子どもたちが毎日作り続ける「うちゅう・ろけっと」の空間の中で子どもたちが考え、生まれた、いろいろなゲームをして遊びました。「キラキラゲーム」といって、キラキラ星になっている子がろけっとで逃げている子をタッチするとキラキラ星に変身してしまったり、「じしゃくゲーム」といって、みんながつくったろけっとが磁石になって、そこへみんながくっついてしまい大人がその磁石をはがしたりと、実に楽しくて面白い発想がたくさんでてきました。また、子どもたちは自分たちの作ったところで遊ぶことで愛着をもち、うちゅう・ろけっとが自分のものになっていきました。 子どもがもっている発想、考えることってすごいなとあらためて感じました。そんな「うちゅう・ろけっと」の世界で、「ここ打った!」「ここ作った!」「ここで遊ぶの楽しい!」などと子どもたち一人一人が自分の力を出し、楽しさ、うれしさ、満足した気持ちを味わってほしいと思いながら過ごしました。  当日は、子どもたちの作った「うちゅう・ろけっと」の世界でお母さんお父さんたちと、一緒に通ってみたり「ここ作ったよ!」「打ったよ!」と紹介してあげたり、ゲームで一緒に遊んだりという姿がたくさん見られた一日でした。  そんな今まで遊んできた「うちゅう・ろけっと」の世界で子どもたちは、そこでたくさん遊び楽しさを十分に味わい過ごしてきました。作り始めてから1ヶ月ちょっとたち、気持ちがだんだん離れ、次の違うところへ目を向けるようになってきた先日、「うちゅう・ろけっと」とさようなら(解体)をしました。そこには、「明日さようならだから遊んでおこう!」という声やうちゅうろけっとを何回も通ったり、気に入ったところにずっといたり、遊んだりする姿がたくさん見られました。また、クギをぬいたり板をはがしていくうちに、そのことに気持ちが向き楽しくなっていく子の姿も見られました。形としてはなくなってしまいましたが、子どもたちは今もえのぐの時に「ろけっとがとんでいるんだよ!」と何枚も描いたり、帰りのときや外でろけっとで遊んだゲームがしたいといってやったり、気持ちの中にはまだまだたくさん「うちゅう・ろけっと」の世界がひろがり続けています。 そして、これからも子どもたちが考え・つくるということを大切にしていきたいと思っています。