この「かがやき+1」では、子どもたちの姿を通して、保育者が、保育の中で感じたこと、考えていること、大切にしていることをお伝えしていきます。
今回は
です。
4月から始まった幼稚園での生活にも慣れてきて、それぞれに友だちに興味を持ったり、自分の思いを出せるようになってきたり、友だちと遊ぶことが楽しくなってきた二学期。この時期に、みんなで気持ちを向けて、トンカチ・ノコギリ、木箱・板を使って空間をつくり、そこで遊びたいと考えていました。
そこで私たちは、子どもたちの興味があることや今好きな遊び、楽しんでいる世界など、普段の子どもたちの遊びに注目していきました。
すると、ガオーガオーと園庭にある遊具のあたりで、いつも、きょうりゅうになって遊んでいる子どもたちがいました。ほかの子どもたちも、そこに、きょうりゅうがいることを知っていました。あるときは、きょうりゅうになりながら、レストランをしていて、回りの子たちが食べに来たり、自然ときょうりゅうの子とそうでない子が、一緒に遊び、世界を共有していました。はじめは、何人かの子どもたちから始まった遊びでしたが、きょうりゅうは森に住んでるんだよ、暗いところにいるんだよ、きょうりゅうを探すのはふねに乗っていくんだよ、など、少しずつたくさんの子どもの中でイメージがふくらんでいきました。
そして、きょうりゅうを探しにいくふねをつくろう!と話は進み、みんなで相談をしていくと、「おおきなふねだとしずむから、ちいさいふねをふたつにしよう」「ふねがしずまないように、パラシュートをつけて、うかぶようにしよう」「つりができるところをつくろう!」「うみにもぐれるように、せんすいかんをつくろう」などなど、どんどんイメージがあふれ出てきます。
子どもたちは、これまでの生活で、こんなのつくりたい!こんなことしたい!という自分の思いを実現してきました。また、友だちが思ったこと感じたことを実現していくのを見て知っていました。そんな経験から、自分たちの思いを少しずつでも形にしていくことができることを知っていて、どれも、イメージするだけにとどまらず、これをつくりたい!という気持ちでみんなに伝えていきました。
そして、約一ヵ月という長い期間をかけてつくりました。これからのイメージを形にするといっても、扱いづらい木材を使ってつくるので、すぐにできるものではありません。一人でつくれるものでもありません。釘1本打てたことや、時間がかかっても一人でいた一枚を切り上げたこと、毎日少しずつ難しい横打ちで木箱を固定し、みんなが乗れるくらい丈夫にしたこと、こんなのをつくりたいというイメージを形にしたことなど、この空間の様々な場所で、やった〜!できた〜!という満足感や達成感を味わっていました。
毎日続く生活の中で、トンカチで空間を作るときもあれば、きょうりゅうのゲームを考えて遊ぶときもあります。できたところで遊んだり、またつくったりを繰り返しながら、過ごすことで、自然とこの空間に愛着がわき、子どもたちにとって楽しい場所になっていきました。そして、自分たちだけでなく、おうちの方々と遊びたい気持ちも膨らんでいきました。
この空間をつくって遊ぶということを通して、友だちと一緒だからこそ、拡がる世界があり、様々な場面で満足感・達成感を味わい、それぞれに自信をつけていきました。この生活が、また次のこんなことした!という気持ちにつながっていくといいなと願っています。