はせだより+1 平成17年 7月
2005年7月11日

このコーナーでは、私たち保育者が、保育の中で大切にしていること、考えていること、感じたことを、子どもの姿を通してお伝えしていきます。 今回は   

絵を描くって楽しい!

です。                   

 長谷幼稚園では、子どもたちが絵の具で、園庭にある白い板に描いたり、私たち保育者が園庭に作った空間で描いたり、また一人ひとりが白い画用紙に描いたり・・・と絵の具で描く機会が多くあります。  5月、子どもたちに「どんな所で絵の具してみたい?」と聞いてみたところ、「道みたいで、その両側が壁になっているところ」「おばけやしき」「登って描けるところ」など話がでてきました。  そこで私たち保育者が絵の具を楽しめる空間として、トンネルや囲われた部屋や登ってかける台と壁を作り(土台は木箱、戸板などで作り、その周りに絵の具で描けるようにダンボールや茶紙をはってつくったものです)そこで子どもたちは自由に絵の具で描くことを楽しみました。  いつもとは違う空間で、絵の具で描けることが嬉しかったり、大きな画面いっぱいに描くことが楽しかったり「赤と青がまざったら紫になった!」と色が変わっていくことを喜んだり・・・絵の具という素材を通して、いろいろなことを感じた子どもたちの姿がありました。そして、絵の具で描くことが幼稚園の生活の中で、好きなことのひとつとなった子もいました。  こうして5月楽しんだことが、白い画用紙に自分の思いを感じたまま自由に表現することにつながるといいなと思います。  子どもたちは筆を手に画用紙にむかいます。「白いところがなくなったよ」と画用紙一面ピンクにしたり、「赤の次は緑で描こう」と色を楽しみながら描いたり、描いた色が混ざって色が変わっていくのを楽しんだり、その子が空想したものやイメージしたものをその子の表現で自由に描いたり、描いた絵からまた次のイメージがふくらんでいったりと、子どもたちの描く絵は本当に一人ひとり様々です。  私たち保育者は、子どもたちの描く絵をその子の内面を表現しているものと考え、一人ひとりが表現するものを大切にしたいと思っています。また、子どもたちが自分の思いを感じたままに自由に表現していってほしいので、幼児期に“描き方”を教えたり「今日は○○を描こう!」とテーマをなげかけたりする必要はないと考えています。  そして、画用紙一面を思う存分塗りたくる中で、子どもたちが気持ちを解放していく姿があり、そのような経験は幼児期にはとても大切なことだと私たちは思っています。  電車が好きな子が「これ山の手線」と言って画用紙一面、きみどりで描いたり、「これ、まるちゃん」「こっちはお母さん」「こっちはお父さん」と話しながら同じ色や大きさの丸をたくさん描いたりします。このように、子どもたちは本物と同じ色や形ではなく印象に残ったものを大きく描いたり、たくさん描いたりします。このように“丸1個”“線1本”の中にも、子どもたちの思いや様々なストーリーがぎっしり詰まっているものなのです。 私たち保育者は、これからも子どもたち一人ひとりが表現するものを大切にすごしていきたいと思っています。子どもたちが「絵を描くって楽しい」と感じられるように、その時その時、様子をみながら、言葉のかけ方を考えたり、いろいろな絵の具の出し方を考えたりしていけたらと思っています。