かがやき+1 平成30年 10月
2018年10月3日

『秋晴れの散歩道』





「あの くも、えのぐで ぬったみたいだね。」
ふと見上げた空高く、一面に広がる雲を指してあかの子(年少児)が言いました。
うろこ雲やいわし雲と呼ばれる秋の雲が連なっている日、子どもたちと散歩に出かけました。

 車道から外れた小径で、数人の子たちが、囲うような形でじっと見つめる先には小さな褐色のバッタ。
「横にうすい黒い線が入っているよ。」「ごはんは、何を食べるのかな。」自然と声を潜めていた子どもたちでしたが、砂利を踏む足音につられバッタが勢いよく飛び立つと、「飛んだ、飛んだ。」「どこに羽が隠れていたの。」と、目を丸くし、顔を見合わせていました。
近くで花を見ていた子たちも、「今、なにか飛んで行ったの。」「茶色いバッタもいるんだね。」と、バッタを探し始めました。
どうにかして隠れ通したバッタに向けて、「かくれんぼ、今度は一緒にしようね!」と伝えると、バッタになりきって道を進んでいました。
「幼稚園にも、茶色いバッタがいるのかな。」「帰ったら箱(空き箱)で、さっきのバッタの家族をつくろうよ。」と、つぶやく子たちの姿がありました。

 保育者は、子どもたちと散歩へ行く時、自然を感じられる場――既存の遊具などで遊ぶのではなく、それぞれの楽しさを感じられる場を選んでいます。自然の中で過ごしている子どもたちは、思い思いのことを感じていて、時にはそこからイメージの世界が膨らみ、遊びが広がっていくのです。
 散歩から長谷幼稚園に帰ってきても、子どもたちは遊びの限られるおもちゃではなく、空き箱やえのぐ、トンカチなどの素材で遊んでいます。
 生活する中で、子どもたちが思いついたままに楽しめる場でありたいという願いを持って過ごしています。

 ちなみに"バッタの家族"は、お弁当を食べた後に、空き箱でつくり始めていました。一緒につくっていた子たちは違うクラスで、実は今まであまり一緒に遊んだことがなかったのですが、散歩をきっかけに楽しい仲間になっていました。
 こういったふとした時の新たな出会いもまた、それぞれに過ごす中だからこそ生まれるものなのでしょうか。