かがやき+1 平成26年 7,8月
2014年8月2日





「大好きなものみつけた」




 長谷幼稚園では、毎日子どもたちが自分の行きたい場所で、自分のやりたいことや大好きなことをして遊んでいます。自然の中で木の実や虫を探している子、砂や泥を全身で楽しんでいる子、園庭の白い板いっぱいにえのぐを塗っている子、箱や布などの廃材を使って思いついたものをつくっている子などその日、その時、その子によって色々なことを楽しんでいる姿があります。そんな遊びはどれも、子どもたちのなかにふっと生まれた「きょうは~してあそぼ!」「こんなことしてみたいな」「いいことおもいついた!」という様々な思いやひらめきから始まっていきます。何が始まるかは全くわかりません。だからこそ、私たち保育者も「今日はどんなことがあるかな?」と子どもたちと同じようにわくわくした気持ちになります。自分のやりたいことや夢中になることをみつけた子どもたちの表情はどの子もとても素敵です。子どもたちが自分たちの思いでやっていくからこそ、その遊びは子どもたちのものになり、次の日また次の日へとつながっていく思いやこれから先もずっと心に残るものがたくさんあるのだと思います。そんな一人ひとりのかがやく瞬間に日々出会えることを私たちは何よりも嬉しく思っています。

 

 先日、日蓮宗保育研修で、長谷幼稚園の卒園生である舘鼻則孝さんに貴重なお話を伺うことができました。舘鼻さんは現在ファッションデザイナーをされていて、レディー・ガガさんやダフネ・ギネスさんといった方々が愛用されている靴など、世界中の人々に愛される作品をたくさんつくっていらっしゃいます。舘鼻さんは、長谷幼稚園で過ごした日々のことを今でもよく覚えているといいます。そして、「とにかく自由だった。」「子どもから出てきたものを大切にしてくれた。子どもがやっていることを遮らないでいてくれた。」と長谷幼稚園への温かい思いをとても懐かしそうに、愛しい眼差しで語ってくださいました。そんな風に今でも思われる幼稚園を本当に素敵だなと思うと同時に、これまで長谷幼稚園で過ごしてきた子どもたちや今幼稚園に来ている子どもたちにとってもそんな場所にいつまでもなってくれたらいいなと思いました。

  舘鼻さんが初めて靴を自分で作ったのは15歳だったといいます。その時に作った靴は、初めてながらも自分で「いいものができた!」と思ったそうです。子どもたちが自分たちの手で何かをつくり出した時の思いはそれと同じなのかもしれません。ある日、3歳児のA君が小さな箱を使ってピアノをつくりました。その箱の中にはいろんな色のクレヨンで線が描いてあります。他の人から見れば、これはピアノだと言われなければきっと何なのかわからないものです。けれど、A君にとっては自分自身で考えてつくった、たった一つしかない自分の大事なものでした。A君は近くにいた子どもたちと歌をうたいながら、嬉しそうにそのピアノを弾いていました。子どものつくり出す世界は、A君のつくったピアノのように見ただけでは分からないものやはっきりとした形にならないものがたくさんありますが、そこにこもった思いは一人一人にあります。また、そんな世界だからこそ、子どもならではの面白さや目に見えない想像の世界があって本当に魅力的です。A君のピアノも舘鼻さんが感じたように、自分自身がいいものができたと思ったものならば、それが何よりも大事で、素敵なものなのだと感じました。

 

 舘鼻さんはこんなことも言っていました。「今からどれくらい過去を遡れるかによって、自分の進む道がみえてくる。」何が好きだった?何をしていた?それらすべてが自分のやりたいことにつながってくるといいます。舘鼻さんの人生を決めたのは、舘鼻さんご自身です。けれどこれまで過ごしてきた日々が全部つながって今の自分、そしてこれから先の自分になっていくのだと思いました。それはすべての人に共通することだと思います。だからこそ、今このときを大切に見つめていきたいですね。