H21.10 かがやき+1
2009年11月1日

この「かがやき+1」では、子どもたちの姿を通して、保育者が、保育の中で感じたこと、考えていること、大切にしていることをお伝えしていきます。 今回は   

『みんなのもり』

です。

 9月の中旬から10月の終わりまで、子どもたちは木材を使って、園庭いっぱいに木の空間を作り、遊んできました。  4月からそれぞれに好きなものを見つけてきた子どもたちが、2学期に入って、「〜したい」という思いを持って過ごす姿や、仲間と一緒に過ごす楽しさを感じている姿がありました。1学期からやっているとんかちも、好きなもの、身近なものの1つになっていました。このような子どもたちの姿から、「こんなのがあったらいいな」と思う世界を、とんかちと木材を使ってみんなでつくっていく中で、様々なことを感じてほしいと思いました。  たくさんの木が生え、虫たちが集まっている園庭で遊び、散歩先では色々な植物に出会い、生活の中で自然と豊かに触れ合っている子どもたち。遊びの中から“おおきなき”のイメージが生まれ、「みんながのれる、おおきなきがあるといい!」「ねっこがすべりだいになってるの!」「ねっこでかくれんぼしたい!」とイメージが膨らんでいきました。  子どもたちは、それぞれに、「ここがおもしろそう!」「ここがつくりたい!」と思う場所を、どのように作るか相談しながら、木箱や板を1つずつ組み合わせて作っていきました。  “おおきなき”は、3段に重ねた木箱の柱を4本作り、戸板を乗せて、さらにその上に厚い板を並べて、上に乗れる位頑丈にしていきました。上に登るための長いはしごと、降りるための階段もつけ、“おおきなき”との間に寝れる“となりのき”も作りました。  “ねっこのすべりだい”は、「(幼稚園にある)ぐるぐるすべりだいみたいにしたい!」と、滑るところを途中で曲がるように二段階に分け、すべり台の周りをぐるっと回る階段を作り、スロープもつけました。はしごからも登れるようにして、はしごを木箱に渡した橋も作り、橋の先には段差のある“でこぼこねっこ”もできました。  他にも、“かくれるところ”“てんぼうだい”“どうぶつのおうち”“ひげねっこ”“もりのこうえん”(*)など、「こんなのつくりたい!」と思い立って、それぞれに作っていく姿がありました。  つくっていく中で、他の子が打っている姿を見ている子や、自分でどんどん打っていく子、「きょうはやってみようかな」と思う子、毎日「やりたい!」と思う子、様々な子どもたちの姿がありました。そのような一人ひとりの気持ちやペースを大切にしながら、それぞれが気持ちを向けて、楽しいと感じる場所や時間をつくっていけたらいいと願って過ごしてきました。  「ここ、うてたよ!」「ながいくぎ、はいったよ!」「やっときれた!」という嬉しさや達成感、満足感が、「とんかちぱわーあるよ!」「のこぎりぱわーすごいよ!」という自信になり、「もっとうちたい!」「あしたもやりたい!」という気持ちにつながっていました。「こんなふうにしたいな」「どうやってつくろうか」と考え、やってみて、「こうしたらいいよ!」と工夫していく姿、釘がなかなか入らなかったり、曲がったりしても、打ち続けていく姿。子どもが自分で「やりたい!」と思うものだからこそ、エネルギーや気持ちがそこに向かっていき、自分たちで作った空間、自分が打ったところに特別な思いが詰まっていることを感じました。  また、「○○とやりたい!」「○○と、こうたいでうったんだ!」と、大好きな友だちとつくる嬉しさや、近くで打っている子と話したり、一緒に打つようになったりと、クラス、年齢、男女を越えての関わり合いが生まれていきました。他の子が打っている姿も見て、感じている子どもたちからは、「ここ、○○がつくったところ」「○○、とんかちぱわーすごいね!」という声がたくさん聞こえ、仲間を自然と受け入れ、認め合っていく気持ちが素敵だなと思いました。  さらに、作った空間で遊び、歌や踊り、ゲームを考え、『みんなのもり』という名前もついて、空間が、より楽しく、大好きなものになっていきました。おうちの方も、子どもたちから話を聞き、つくっている中に加わり、一緒に遊んで、子どもたちがつくっている空間を知り、思いを感じながら過ごしてきました。子どもたち、おうちの方々、保育者、みんなで『みんなのもり』で過ごした日も、とても楽しい一日となりました。  『みんなのもり』をつくって遊ぶ中で、様々なことを、体と心で感じてきた子どもたち。ここでの経験が、また1つの宝物となって、これからの生活につながっていくといいなと願っています。 H21.10 PLUS1.jpg *“かくれるところ”   縦2段、横2個の木箱の壁を、間を空けて2個作り、長めの板を上に何枚も渡して、中に隠れたり通ったりできるようにし、上に「バタンッ」と持ち上がるドアを作りました。虫が寄ってくるように樹液が塗ってある(つもりの)木や、椅子と時計もつけました。  “てんぼうだい”   板を3段重ねてとめ、隙間からのぞくと隠れている子が見えるようになっていました。  “どうぶつのおうち”   木箱を円形に並べて家の囲いを作り、床を敷いて、ちょうつがいのように「パタン」と開くドアをつけました。2枚の長い板を、三角屋根のように打ちつけ、大きな布の中に緩衝材を入れて縫った、ふわふわの屋根もできました。  “ひげねっこ”は、角材と板を一つ一つ色々な方向につなげていき、上を迷路のように渡って遊べるようにしました。“ちいさなすべりだい”や“ひげねっこ”とつながっていて、駅と線路がある”もりのこうえん”もできました。